テーマ 99 管理職者として今と将来において必要な成果を獲得する
〜知の探索・知の深化理論から学ぶ〜
■知の探索・知の深化とは
アメリカ、スタンフォード大学の社会学者ジェームズ・マーチ氏が
1991年に論文発表したものに、
知の探索・知の深化理論というものがあります。
知の探索・知の深化理論は、企業内のイノベーションの
方法を説明するために非常に重要な理論と言われております。
◇知の探索・知の深化とは何か
実務的には下記のようなことになります。
・知の探索:学習により、現在行っている仕事に、
新しい知識や技術等を追加し、新しい仕事を生み出すこと。
*オーストラリアの経済学者ジョセフ・シュンペーター氏によると、
「新しい知」とは、常に「既存の知」と「別の既存の知」の
「新しい組み合わせ」で生まれるとのことです。
・知の深化:現在行っている仕事を徹底的に深掘りし、
何度も活用して磨き込み、収益化すること。
■管理職者は、常にチャレンジが絶対必要
コンピテンシー・トラップとは
「知の探索」を怠りがちになる傾向が、企業の本質として備わっており、
このため知の範囲が狭まり、
結果として企業の中長期的なイノベーションが停滞することを、
経営学では「コンピテンシー・トラップ」と呼びます。
企業が知の探索を怠りがちになる理由として、
下記のようなことが上げられております。
理由@:知の探索は、自分の認知の範囲外に出ることなので
経済的、人的、時間的にコストがかかる。
理由A:知の探索は、不確実性が高く、失敗に終わることが多い。
理由B:知の深化は、既存知の活用であるため、
確実性が高くコストも小さい。
組織・意思決定者にとって深化に傾斜する方が
短期的に見た場合は合理的となる。
「コンピテンシー・トラップ」のような状況は、
日常の職場でもよく起きていることと思います。
今の仕事が忙しく、緊急度は低いが、
将来のために重要な仕事にいつまでも手を付けずにいるなど、
管理職者として本来、今、行わなければならない仕事が
できない状況を研修の中でもよくお見かけ致します。
管理職者の方は、現状をよく把握した上で、
考えて、考え抜いて、今と将来のために管理職者として
行うべき仕事を目標として設定し、実践して、
結果を創っていかなければなりません。
管理職者は、時間をどう確保するかを含めて、
常にチャレンジしていかなければなりません。
■新しい現実を生み出すために管理職者として必要なこと
知の探索だけでは、会社はやっていけません。
知の深化をすることで収益性のあるビジネスとなり、
企業が維持できることになります。
「日本企業の多くがコンピテンシー・トラップに陥っているため、
日本企業にはイノベーションが少ない」とも最近よく言われます。
右手と左手が上手に使える人のように、
「知の探索」と「知の深化」について
高い次元でバランスを取る経営のことを
「両利きの経営」といいいます。
実務的には管理職者の方は、
今と将来それぞれにおいて獲得すべき成果を認識し、
バランスさせ実践し、新たな付加価値・ビジネスチャンスを
生み出していくことが仕事となります。
知の探索・知の深化理論が示すように学習をしないと
新しい知が生まれず、
担当部署の成長、企業の成長がないことは明白です。
管理職者の方はもちろん、部下の方も、期限を定めた目標を設定し、
知の探索のための学習を意識的、計画的に行うことが絶対に必要です。
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